がん遺伝子検査
これまでは、一般に、癌は生活環境の中での発癌物質への曝露などの後天的な要因が主な原因とされてきました。ピロリ菌と胃癌、喫煙と肺癌などはその代表的な例です。ところが、生まれつきの遺伝子異常がその発症に寄与している例の少なくないことがわかってきています。
例えば、生まれつきBCR1という遺伝子異常を持った女性はそれが陰性の女性と比べ、乳癌を8倍、卵巣癌に至っては40倍も癌を発症しやすいことがわかっています。遺伝子科学の発展により、こうした特定の癌を発症しやすい体質を比較的簡単に調べることができるようになりました。血液や口内擦過により採取された体細胞のゲノムを解析することにより、癌を発症しやすい生まれつきの遺伝子異常を検出できるようになったのです。
この検査の意義は少なくありません。現在はすべての人口に画一的な癌スクリーニングの方針が決まっています。例えば、マンモグラムによりる乳癌検診は40歳から、家族歴があっても35歳から、また、大腸癌検診は50歳から、家族歴があっても40歳からと定められています。もし癌になりやすい遺伝子異常の存在がわかってるのであれば、より若年から、より精密な方法でスクリーニングを開始することが正当化されます。早期発見により、癌完治の可能性が高まるのです。
但し、その弊害も考慮しなければなりません。その遺伝子が陽性であったとしても、癌が100%発症する訳でありません。
いつか癌になってしまうという不安を抱えながら人生を送るべきではありません。そのような不安のある方はこの検査を受けるべきではありません。
当院でオーダーする遺伝子検査は、癌遺伝子29種類を始め、心血管病になりやすい体質、薬剤代謝の特異性を調べる総数で79種類の遺伝子異常を調べます。陽性の結果が出た場合には、検査施設に所属する遺伝子カウンセラーによる無料のコンサルテーションを受けることができる他、今後の癌スクリーニングの最適な方法をアドバイスします。